「逃げるは恥だが役に立つ」という言葉があります。
ドラマのタイトルとして有名になりましたが、もともとはハンガリーのことわざに由来するといわれています。
仕事から逃げることに対して、「情けない」「根性がない」「負けたようで恥ずかしい」と感じる人もいるでしょう。
しかし、逃げることが最善の選択になる場合もあります。
たとえば、ブラック企業や職場いじめ、どうしても合わない上司との人間関係などで、心身をすり減らしながら働き続ける必要があるのでしょうか。
一時的に恥ずかしい思いをしたとしても、ずっと苦しみながら働き続けるより、環境を変えたほうがいいこともあります。
一時の恥より、自分の人生のほうが大切です。
逃げることは「負け」ではなく戦術
「逃げる=負け」と考える必要はありません。
逃げることは、一つの戦術でもあります。
いったん引いて態勢を整え、別の方法を考える。戦国時代の武将でも、常に戦い続けていたわけではありません。勝てないと判断すれば撤退することもありました。
人生も同じです。
「ここで逃げたら負けだ」
そう思って限界まで我慢するより、一度その場所から離れて、自分の人生を立て直すほうがいい場合があります。
仏教では「精進」と「忍耐」を教えられる
仏教では「精進」が大切だと教えられます。
精進とは、目的に向かって努力を続けることです。また、苦しいことがあっても耐え忍ぶ「忍辱」も大切にされています。
しかし、仏教は「どんな環境でも限界まで我慢し続けなさい」と教えているわけではありません。
仏教には、琴の弦にたとえて努力のあり方を教えられた話があります。
琴の弦は、強く張りすぎれば切れてしまいます。反対に、緩めすぎてもよい音は出ません。
大切なのは、適度な張り具合です。
人生には、歯を食いしばって頑張らなければならないときがあります。しかし、ずっと緊張した状態で走り続ければ、いつか限界がきます。
頑張るときは頑張る。
休むときは休む。
そして、どうしても環境が合わなければ、その環境から離れる。
これも人生には必要な判断です。
サボテンは水の中で生きる必要はない
シロクマに「ハワイで暮らしなさい」と言ったらどうでしょう。
暑さに苦しむのは当然です。
そこでシロクマが「この環境では生きられません」と言って北極へ戻ったとしても、「根性がない」と責める人はいないでしょう。
人間も環境によって大きく変わります。
仏教では、環境や周囲からの働きかけを「縁」といいます。
私たちの行いが「因」となり、さまざまな「縁」と結びついて結果が生じる。これを因縁果の道理といいます。
職場でも同じです。
上司という「縁」によって仕事が楽しくなることもあれば、毎日会社へ行くのが苦痛になることもあります。
もちろん、自分の行動や考え方を変える努力も大切です。
しかし、どれだけ努力しても、どうしても合わない相手や環境はあります。
そんなときは、「自分がダメだから」と決めつけるのではなく、縁を変えるという選択肢を考えてもいいのです。
部署を変える。
転職する。
働き方を変える。
付き合う人を変える。
縁が変われば、自分の行動も変わり、そこから生まれる結果も変わっていきます。
サボテンは水の中に生える必要はありません。
蓮の花は空中では咲きません。
シロクマはハワイではなく、寒い場所のほうが生きやすい。
人間にも、その人の力を発揮しやすい環境があります。
今の環境がつらくてたまらないのなら、「もっと我慢しなければ」と考えるだけでなく、「縁を変えられないだろうか」と考えてみることも大切です。
縁によって人生は大きく変わる

「我行精進 忍終不悔」に学ぶ人生の目的
職場がつらくてたまらないときこそ、「出世の本懐」について考えてみるのもいいでしょう。
ここでいう出世とは、会社で偉くなるという意味ではありません。
仏教でいう「出世の本懐」とは、この世に生まれてきた目的という意味です。
何のために生きているのか。
何のために働いているのか。
人生で本当に果たさなければならないことは何なのか。
仕事で苦しんでいると、その会社や上司が人生のすべてのように感じてしまうことがあります。
しかし、職場は世界の一部分にすぎません。
経典には、
「我行精進 忍終不悔」
という言葉があります。
「たとい身を、もろもろの苦毒の中におわるとも、我が行は精進にして、忍びてついに悔いじ」
どんな苦しみの中にあっても、人生の目的に向かって進み、最後まで悔いのない人生を生きるということです。
歴史上の人物たちの人生の目的とは

仕事は人生の目的ではなく手段
職場も会社も上司も、この世には無数にあります。
しかし、自分の人生は一度しかありません。
仕事は生きていくための大切な手段ですが、仕事そのものが人生の目的ではありません。
登山を考えてみてください。
山頂へ向かう道は一つとは限りません。
一つの登山道が崩れていて進めなければ、別のルートを探せばいい。
そこで、
「この道から登れなかったから、登山そのものを諦めよう」
と考える必要はありません。
人生も同じです。
今の会社でうまくいかなかったとしても、人生に失敗したわけではありません。
一つの道が合わなければ、別の道を選べばいい。
逃げることは、人生から逃げることではありません。
むしろ、人生の目的に向かって進むために、今いる場所から離れなければならないこともあります。
「逃げるは恥だが役に立つ」。
もし今いる環境がつらくてたまらないなら、ただ我慢するだけではなく、縁を変えることも考えてみてください。
道は一つではありません。
人生の山頂を目指すためなら、ルートを変えてもいいのです。
感想
仕事が辛ければ逃げてもいい、逃げることは恥ではないと思えば気持ちが楽になります。合わない上司と仕事をするのはとても苦しいです。私もその経験はあります。会社へいくことがとても憂鬱なときもありました。
仕事は自分に合うものもあれば合わないものもあります。合わない所で頑張り続けるのではなく、縁を変えることで結果が変わるという因縁果の道理はとても納得しました。
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