職場や家庭で、
「つい怒ってしまった」
「怒らないと相手が言うことを聞かない」
と思った経験はないでしょうか。
確かに世間では、
「舐められてはいけない」
「厳しく叱らなければ伝わらない」
と言われることがあります。
しかし本当に怒ることは必要なのでしょうか。
仏教では怒りについて深く教えられています。
怒った方がいい場面はあるのか
世間では、
・部下を指導するとき
・子供をしつけるとき
・理不尽な相手に対応するとき
など、「怒った方がいい場面がある」と
考えられています。
確かに相手を注意したり、間違いを正したりすることは必要です。
しかし、それは必ずしも怒ることと同じではありません。
冷静に伝えることと、感情的に怒ることは全く別です。
怒らなくても相手に伝えることはできます。
むしろ怒りに任せて話すことで、本当に伝えたいことが伝わらなくなることも少なくありません。
怒りの原因についてはこちらも

怒られると人はどうなるのか
怒られた側は、
「納得して従う」
のではなく、
「怒られるのが嫌だから従う」
ことが多いものです。
そのため表面的に従っているように見えても、心の中では反発している場合があります。
また、職場では怒りっぽい上司がいるだけで職場の雰囲気が悪くなり、作業効率が下がることもあります。
人は安心して働ける環境の方が能力を発揮しやすいからです。
仏教で怒りを「瞋恚」と教える
仏教では怒りのことを瞋恚(しんに)といいます。
瞋恚は、貪欲・愚痴と並ぶ三毒の煩悩の一つです。
そして仏教では、怒りをしばしば「炎」にたとえます。
なぜなら怒りが起こると、
・言ってはいけないことを言う
・やってはいけないことをやる
・正しい判断ができなくなる
からです。
炎が燃え広がるように、怒りも理性を焼き尽くしてしまいます。
三毒の煩悩についてはこちらも

怒りが人間関係を壊してしまう理由
怒りによって最も大きな損害を受けるのは、人間関係です。
怒っている本人は忘れていても、怒られた側は傷ついた言葉を長く覚えています。
例えば、
・「お前はダメだ」
・「何をやっても失敗する」
・「役に立たない」
このような言葉は何年経っても忘れられないことがあります。
一瞬の怒りが、長年築いてきた信頼関係を壊してしまうこともあるのです。
怒りは伝染する
怒りの恐ろしいところは、自分だけで終わらないことです。
怒りは周囲に伝染します。
例えば、
・上司が部下に怒る
・部下が後輩に怒る
・後輩がさらに弱い立場の人に怒る
という連鎖が起こります。
家庭でも同じです。
・親が子供に怒る
・子供が怒鳴られる環境で育つ
・大人になって自分の子供を怒鳴る
という形で怒りが受け継がれることがあります。
怒りは一人の問題ではなく、周囲に広がっていくのです。
怒りは「自損損他」
仏教では怒りを自損損他(じそんそんた)の心といいます。
自損損他とは
「自分も損をし、他人も損をすること」
です。
怒ることで、
自分の損
・心が苦しくなる
・後悔する
・信頼を失う
他人の損
・傷つく
・委縮する
・人間関係が悪化する
結果として誰も幸せになりません。
だから仏教では怒りを慎むよう教えられるのです。
人間関係を良くする「自利利他」の心
怒りによる自損損他に対して、仏教では自利利他(じりりた)という生き方が説かれています。
自利利他とは、
「他人を幸せにすることで自分も幸せになれること」
です。
相手を尊重しながら接することで、
・自分の心も穏やかになる
・相手も安心する
・良好な人間関係が築ける
ようになります。
人間関係を良くする自利利他についてはこちらも

山彦のように返ってくる人間関係
昔から次のような言葉があります。
呼べば呼ぶ
呼ばねば呼ばぬ
山彦ぞ
まず笑顔せよ
みな笑顔する
山に向かって声を出せば、その声が返ってきます。
笑顔で接すれば笑顔が返りやすくなり、怒りで接すれば怒りが返ってきやすくなります。
人間関係も山彦とよく似ています。
まず自分がどんな言葉を発しているかを見つめることが、人間関係を良くする第一歩なのです。
まとめ
仏教では怒りを「瞋恚」といい、三毒の煩悩の一つと教えられています。
怒りは、
・言ってはいけないことを言わせる
・やってはいけないことをやらせる
・人間関係を壊す
・周囲に伝染する
という特徴があります。
だから怒りは「自損損他」の心なのです。
人間関係を良くするためには、怒りに任せるのではなく、自分も相手も利益を得る「自利利他」の心を育てることが大切です。
山彦のように、自分が発したものが周囲から返ってくることを忘れずにいたいものです。
感想
怒ることは他人に損をさせ自分も損になるといい、それを自損損他といいます。過去に舐められてはいけないと思い怒ったことはあるが、そうではなく怒らずに相手に伝えたほうがいいという。それはなかなか難しいように思いました。
僕自身、職場で先輩に怒られたことがあるが、なんでそんな言い方するんだろうと反感を持つことがありました。もっと冷静に言ってくれればいいのに心では思っていました。
プロ野球の監督だった野村克也さんによれば、「叱る」と「ほめる」は同意語だという。どちらもその源泉は愛情だからであるという。違うのは「叱る」と「怒る」です。「叱る」の源泉には愛情があるが、「怒る」のは愛情からではないといわれました。
仏教では怒りとは瞋恚といい、三毒の煩悩の一つに数えられる。怒ることは自損損他になり、相手も自分も不幸になるとわかりました。
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