美輪明宏は、いつも華やかな衣装をまとっているイメージが強いですが、2012年のNHK紅白歌合戦に初出場した際には、「聴く人の想像力を邪魔しないように、黒子に徹した方がいい」という理由で化粧っけのない姿に黒い短髪、黒いシンプルな衣装で登場、美輪の代表作の一つ「ヨイトマケの唄」を6分間、フルコーラスで歌い、大変な反響を呼びました。「ヨイトマケの唄」は1964年、美輪が28歳の時に作詞作曲した、「工事現場で家族のために懸命に働く母親をテーマにした作品」です。それまでシャンソンなどを中心に歌ってきた美輪にとって、まるで路線の違う曲でしたが大ヒットします。しかし当時は、歌詞の中に差別用語が入っているとの理由で、日本民間放送連盟から放送禁止歌に指定され、NHKを除くテレビ・ラジオで披露されることはありませんでした。しかし紅白歌合戦でフルコーラスで披露されたことで「ヨイトマケの唄」とう歌の凄さ、美輪明宏というエンターティナーの素晴らしさを、多くの人が実感することになりました。

本書の著者 美輪明宏 1935年生まれ、長崎県出身。16歳にしてプロ歌手となり銀座のシャンソン喫茶「銀巴里」を拠点に活躍。注目を集める。57年「メケメケ」が大ヒット。日本におけるシンガーソングライターの元祖として「ヨイトマケの唄」ほか多数の唄を世に送り出す。67年、寺山修司の「演劇実験室・天井桟敷」の旗揚げ公演「青森県のせむし男」に主演。続いて「毛皮のマリー」、その翌年三島由紀夫に熱望され「黒蜥蜴」に主演して絶賛される。
「私には、親子であろあうと、兄弟であろうと、夫婦であろうと、他人であろうと、腹六分で付き合うべきだという信念があります。腹六分で付き合っていれば、親しき仲にも礼儀ありで、見られたくないところは人に見せなくてすむし、また見なくてもすむ」六分で付き合い、四分の距離を保つことが人と長く付き合っていく秘訣なのです。この言葉は人との付き合いのなかで大事なことだと思っている。腹六分の関係だと少し寂しい気もするが、また会いたいなという気持を持つことができる。人間関係はときにうまくいかなくなることもあるが、そんなときに距離を意識してみるとうまくいくこともある。
「成功者を見る時、人は結果しか見ない」とはよく言われる言葉です。結果を見て妬む前に、その結果に至るまでの過程を見なければなりません。そこに至る努力を知れば、納得して妬まなくなるし、「自分もがんばろう」と思えるようになるのです。スポーツや芸能の世界で活躍している人をみると妬ましく思える。しかしその結果には原因がある。見えないところで努力をしているから活躍できていると考えなければならない。仏教では原因をあきらかにみることを「諦観」という。そして、まいたタネ(行い)に応じた結果になると教えられる。これを因果の道理という。仏教の教えを学ぶと成功者に対して、成功のプロセスを学ぼうと思うことができる。

人に与える愛は、自分自身、幸せな気持ちになれるだけでなく、与えたはずの愛は、いつかどこかでもっと大きな愛になって返ってくると美輪はいいます。愛されたいなら、まず相手を愛することです。人から愛されたいと思う人は多いが、まず自分から相手に対して愛さなければならない。自分から愛を与えないのにもらうことばかりを考えていてはいけない。仏教では他人を幸せにすることで自分も幸せになれることができることを、自利利他という。まず自分から相手に与えることを意識していきたい。
本書には他にも美輪明宏の哲学をたくさん学ぶことができる。僕自身は美輪明宏と三島由紀夫の関係がとても興味があり、なぜ長く親交を深めることができたのかがわかったきがする。
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